働く母のすすめ

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引き継ぐ準備とお金の使いどころについて考えたという話

少し前の話だけれども、私の両親の遺産相続について、姉と話し合い公正証書遺言を作成した。

以前からちらほらと書いている通り、私の実家は田舎のごくごく普通の家庭で、"遺言を残す"という言葉のイメージから想像されるような資産家では決してないし、私自身もまさかこんなにもきっちりと両親の遺言を残すとは思わなかった。我が家の場合、公正証書遺言を作成したのは、ひとり親な姉の終活(法人格を取って事業をしているので、何かあったら個人資産+事業の整理が必要となり大変)のついで、というあまり能動的ではない理由なのだけれど、実際作成してみたら作ってよかったと思ったので記しておく。

 

公正証書遺言を作成してよかったのは、やはり本人らが生きているうちに、確認しながら資産を整理できることだと思う。我が家の場合は、上述した通り、そもそも資産がそれほどあるわけでもないし、両親ともに金融リテラシーがそれなりにあり、もともと金融資産はしっかり管理されてたので、全資産の把握はそれほど難しくなかった(母のへそくり的投資がこっそり出てきたりはした)。けれど、例えば、先日立て続けに亡くなった私の祖父母の相続では、思わぬ資産(価値はないけれど管理が面倒)が出てきたり、実は祖父の連れ子の長男(私の伯父)が養子縁組されていなかった事実が発覚したりで、ひゃー!となったりしたので、生前の資産整理や遺産分与の相談はやっておいた方がいいなと改めて思った。

他にも、親の介護等で兄弟姉妹が揉める前に親の資産を明らかにして、この先の介護の話も含めて遺産の分け方を相談しておくというのは、無用なトラブルを避ける意味では有用だと思う。実際に話をしてみて思ったけれど(介護前であっても)絶対に全員が納得する分け方なんか存在しないので(!)、相続人が若いうちに腹を割って話しておく方が吉。自分がまだ稼げるうちに、おおよその遺産予定額が見えれば、どうしようもなくなってから「お金ないから遺産ほしい!」みたいなツライ争いをするリスクも回避できるし、それに向けて今後の自分の働き方や投資プランを調整することもできる。また介護についても、どれだけアウトソーシングできそうか、できないならば、誰がどの程度エフォートを割くことになりそうか、そのために遺産をどう分けるかなどの話を予め出来るのでよいと思う。

それから、数年前に相続税基礎控除額が大幅に下がったことにより、それほど資産家でなくても相続税の対象となる可能性があることを知れたのもよかった。意外だったのは、両親それぞれの資産だけをみて、相続税の対象になるか否かを考えるだけでは不十分なケースがあるということ。例えば、母親がなくなった時には相続税がかからなかったけれど、その後、父親がなくなった時には、先になくなった母親の遺産の1/2が父親の遺産にオンされた上に、被相続人の数が減っている(基礎控除額が減る)ので、相続税の対象になったりすることがある。国税庁のウェブサイトを見ているだけでは分からない色々が話し合いをすることで見えてきたりする。

 

とかいうややこしい話を、もちろん、姉妹だけでしたわけではない。我が家の場合、姉の仕事絡みの税理士事務所に入ってもらい、遺言の作成から執行(両親がなくなった後の各種資産の名義変更など)までの全てを税理士法人にお任せすることにした。姉も私もゴリゴリに仕事をしているので、手間暇のかかる相続手続きは出来るだけアウトソーシングするということで意見が一致した。これらの一連の手続きを依頼するにあたり、それなりのお金は必要なのだけれど、個人的には上記のようなメリットを考えるとそれほど高くはないと思う。もちろん手続きには両親の合意も必要なので、我が家の場合は「それならば」と一連の費用は、両親持ちで行った。

また、今回、具体的に遺産整理をしてみて気がついたのだけれど、息子は一人っ子なので、将来的に私たち夫婦の資産が息子に渡る時には、相続税の対象になる可能性が高い(人生何が起こるか分からないけれど)。私が両親の遺産を受け取るとその可能性がさらに高くなってしまうので、それを回避するか否か、また回避するならばどのようにするか等の方策も立てることができたのはよかった。祖父母から孫への教育資金の一括贈与など色々と仕組みがあるので、その辺りを税理士さんと相談できたのも大きかった。私個人の思想としては、私腹を肥やすために節税するというよりは、寄付等により税金はできるだけ自分で払う先を決めたいと思っているし、自分の資産を息子に遺産として残すか、他の用途に使うかも含め、お金の使い方は可能な限り自分でコントロールしたいので、こうした機会に専門外の知識を学べたのが一番よかったことかもしれない。