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働く母のすすめ

You are stronger than you think.

サツキやツツジの迷路をぬけて

息子が、最近お気に入りの公園に案内してくれた。

我が家の近くには公園や緑地が多く、息子は保育園の散歩であちこちの公園に行って遊んでいる。息子の「お気に入り」と聞いて、息子が抱っこ紐やベビーカーで移動していた頃からよく行っている(=私が気に入っている)森のある公園などをいくつか思い浮かべたのだけれど、意外にも息子が好きな公園は、我が家から一番近くの住宅街の真ん中にある、一見何の変哲もない公園だった。

その公園はよくある遊具がそこそこ揃っているのだけれど。遊具も種類や混雑具合によっては、息子と一緒に遊んでいる感が少ないような気持ちになってしまうこともあるので、どうしても足が遠ざかってしまう。しかし久しぶりにその公園に行ってみると、息子がお気に入りと紹介してくれたのは遊具ではなく、公園をぐるりと取り巻くように植えられたサツキやツヅジの樹々だった。

サツキやツツジの樹々は、遠目には、ただ公園の外と内の境目を際立たせるために植えられているように見える。私もずっとそう思っていた。けれど息子の案内についていってよく見てみると、個々の樹と樹の間には、ちょうど子どもが一人通れるくらいの通路がけもの道ならぬ"子ども道”のように形成されていた。樹々は、息子の身長と同じくらいの高さがあり、息子の目線で見てみると、まるでサツキとツツジで作られた迷路のようだった。不思議の国のアリスの迷路ような。となりのトトロでメイが初めて会った小さいトトロを追いかけていった樹々の通路のような。

「母ちゃん、ついてきて!」息子の後を必死に追うのだけれど、狭い通路は思うように通れない。もたもたする私を見て「母ちゃん、こっちの道なら通れるんじゃない?」と気遣いをしてくれる頼もしい背中を見つめながら、不安定なでこぼこ道を進む。「ほら、ここ。あっくん(おともだち:仮名)の秘密基地。」見ると、のびた枝の下に子どもが1人入れるくらいの小さな空間があって、白いぴかぴかの石や形の揃った枝などがきれいに集めて並べられていた。「母ちゃんに教えちゃったら、秘密の基地じゃなくなるんじゃないの?」と指摘するとしまった!という顔で、走り出す息子。子どもの頃に感じたワクワクした気持ちを思い出した。

その場にしゃがんで、息子の目線で樹々を見上げると、緑の葉っぱの下にはぶわりと四方八方に枝が広がっていた。
私は枝の広がる様が好きだ。冬に葉っぱが落ちた大木を下から見上げると、枝の広がる様子がよく見える。お互いが自由に枝を伸ばしているようで、葉っぱたちが光を効率良く取り込めるようにルールに則って広がっている。そこには、植物が進化の中を生き抜いてきた理由と物理法則の美しさがある。英語の"dendritic"には”樹枝状の”という意味があるけれど、金属や雪の結晶もdendrite(樹枝状晶)と呼ばれるし、脳の細胞もdendriteと呼ばれる樹枝状の突起を持っている。美しいルールは、この世に汎用性をもって溶け込んでいる。

「母ちゃーん!どこー?」視界から消えた私を探す息子の声に我に返る。やって来た息子は、私のズボンを見てゲラゲラと笑った。みると無数のヌスビトハギがついていた。

息子とともに、ゲラゲラと笑いながら。この先たくさんの迷路を通るであろう息子に、見上げた空に広がる美しいルールの楽しさを伝えていけたらと思った。