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働く母のすすめ

You are stronger than you think.

赤ちゃんと頭部外傷受傷後の父の睡眠パターンを比較してみたという話

赤ちゃんの睡眠の話を書いたので、ついでに表題の話も書いておこうと思う。

赤ちゃん→子どもの睡眠を観察するとおもしろいという話。 - 働く母のすすめ

 
数年ほど前、父が単独自損事故を起こした。頭を強く打ったため脳挫傷になってしまったのだけれど、外科的治療が必要なほどではなかったので、経過観察をすることになった。けれど事故から数時間後、容態が急変し、内臓界隈にも複数の損傷部位が見つかったため緊急手術となり、結局、胸と腰の2本のドレーンをはじめ、酸素や各種点滴などのチューブで動きを制限されることになった。そもそも、採血すらも苦手な父が、そんな状況を受け止められないということは容易に想像ができた。案の定、意識が戻ると暴れだすということで、ICUでの2日間は麻酔で意識レベルを下げた状態で管理されることになった。
 
ICUを出るとすぐに、麻酔を切り、脳外科の個室に入ることになったのだけれど。それから、父が回復に向かう過程がとても興味深かった。
結果からいうと。回復時の睡眠パターンは、赤ちゃんの成長過程の睡眠パターン(の高速再生)にとてもよく似ていた。

麻酔を切ってから何日かは、数時間毎に目を覚ますのだけれど、寝ている時間の方が圧倒的に長かった。例え、母や私と普通に会話をしている最中であっても、すうーっとスイッチが切れたように眠りに落ちる。呼びかけても、リハビリで手足を動かしても起きることはない。そして徐々に、睡眠と睡眠の間隔は長くなっていき、1週間くらいで数時間程度は連続して起きていられるようになったのだけれど。後述するように、昼夜逆転気味になってしまい、約1カ月に渡る脳外科入院中に、完全に睡眠パターンが元に戻ることはなかった。
 
睡眠パターンに影響を与えうる要素として、感情の日内変動も、赤ちゃんのそれとよく似ていた。
息子にもあったけれど、赤ちゃんは夕方になるにつれて機嫌が悪くなり「黄昏泣き」をすることがある。そして夜間も目を覚ますと夜泣きをしたりしてあまり機嫌はよくない。でも大抵、朝になると夜間の不機嫌が嘘のようにご機嫌なことが多い。
父も全く同じだった。夕方になるにつれ、明らかに機嫌が悪くなり、幻覚妄想も酷くなった。母には暴言を吐き、近くに寄ろうものなら殴りかかろうとするのも決まって夕方だった(←私が24時間体制で入院中の父のことを観察する機会を得た理由)。夜は睡眠導入剤や抗精神病で入眠させるけれど、4-5時間で起きて徘徊しようとするので、夜中の2-3時には、車椅子に父を乗せて病院中を散歩し、入眠を促していた。車椅子の上や誰もいない待合室の椅子に丸くなって寝てしまうこともあった。空が白くなってくると、父は急に穏やかになり、小さい頃の楽しかった出来事を饒舌に語った。そして、前日の夕方、母にひどいことを言ったことについて反省の言葉を述べ、比較的ご機嫌な様子で午前中を過ごしていた。
 

一体何が原因なのか。
麻酔は半減期が短く、切るとすぐに意識を回復するものだったので、麻酔自体がその後の睡眠パターンに影響を与え続けたというのは考えにくいように思う。麻酔を切った時にはすでに受傷後2日ほど経っているし、上記のような経過をたどったため、受傷直後の様子は不明なのだけれど、こうした現象はおそらく頭部外傷に由来する部分が大きいのではないかと考えている。外科的手術は不要だったけれど、それなりに血腫や水がたまり脳自体も変形していたので頭蓋内圧は通常より高かっただろうし、最終的には空洞化してしまった部位もあるので、当時の父の脳はかなりdistrurbされたような状態だったのではないかと想像できる。
脳外科退院後は、ひどくなった精神症状のケアのため、精神科閉鎖病棟に数ヶ月入院したので、それ以降の過程は観察できなかったが、精神科退院時には、こうした睡眠パターンは、事故前と同じように回復していた。けれど、事故から精神科退院までの数ヶ月間の父の記憶は、事故から数年経った今でも、失われたままになっている。これもまた赤ちゃんの頃の記憶を、思い出すことが困難なことと似ているのかもしれない。
*これもまたn=1で、個人の推察の域を出ておりませんので、トンデモな拡大解釈はご遠慮ください。

成長過程で、正常な機能を獲得していく過程と、事故による損傷から正常な機能を取り戻していく過程が類似していることは、とてもおもしろいと思う。

そして、正常な機能を獲得していく過程として必要なものであると思うことができれば、赤ちゃんの夜泣きもぐずりもまた、興味深い現象として観察でき、その結果、育児(子どもの成長)を楽しむことができたりもするという理系母ちゃん的ロジック。