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働く母のすすめ

You are stronger than you think.

育休と退園の話

所沢市が打ち出した、保護者の育休時に一部の在園児が保育園を退園するという制度について。

育児休業中における在園児の保育の継続利用について 所沢市ホームページ

現行の制度に問題がある場合であっても。大きく制度を変えるということは、大きく満足をする人が増える一方で、大きく不満を感じる人が増えるというのが一般的かと思う。本来、市民から預かった税金を元に、市民が共に協力しあってよりよく生きて行く環境を整えていく役割を果たす行政が、同じ子育て世帯の間で対立を生むような制度を作ってしまったという点において、今回の件は非常にうまくなかったと思う。制度には合理性が求められるけれど、結局のところ、それの制度の上で生きていくのは感情をもつ人間なので、よほどreasonableな根拠や理由がない限り、急激な舵取りは過度な批判の対象となりやすい。

所沢市は、現在、こうした利用調整指数を明示している。

https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/kosodatekyouiku/hoikuen/h27nyuen/h27sisu.files/sisu1.1.pdf


通常、 同指数が60-70点程度になれば、保育園に入園できるため、育休にて退園をした場合には、退園した園児と新しく生まれた子どもの両方に100点を加算し、優先的にどこかの園に入園できる仕組みにしているとのこと。

http://www.sankei.com/region/news/150612/rgn1506120089-n1.html

けれど、ぱっと思いつくだけでも、こうした変更を行うことによって、
・点数が高くても、復職時に空きがなければ入園できない。
・入園する園が、それまで通っていた園と異なる園になる可能性がある。
といった問題が新たに生まれる可能性が容易に推測される。

このような新たに生じる問題を避けるためにも「退園」ではなく、仕事復帰後に同じ園に戻ることを約束した「休園」ではいけなかったのだろうか?と思う。育休時に子どもを保育園に通わせることに対して、3歳児神話(というトンデモ)を振りかざすことや、育児を「さぼる」と評するナンセンスさに取り合う必要があるかどうかという問題はさておき、行政の対応としては「休園」という選択肢を準備するというステップから始めてもよかったのではないかと思う。

例えば。保護者が年度を跨いで育休を取得した場合。「休園」した園児の定員数分、新たな園児を受け入れたとしても、新年度になって「休園」していた園児の年齢が上がれば、保育士の配置基準が変わり(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準; 第三十三条)受入れ可能人数が増えることもあるので(2→3歳児など) 、「休園」した園児が再び同じ園に戻ることが可能となる。

一方。保護者が年度を跨いで育休を取得するけれども、「休園」した園児の年齢が、新年度に受入れ人数が増えない年齢(1→2歳児など)だった場合や、保護者が年度を跨がずに育休を取得する場合(育休が短い場合)は、新たに園児を受け入れるうんぬんではなく、そもそもその園、というかむしろ市の保育施設として新規に園児を受け入れるためのキャパシティが不足しているので、 新規に保育施設を作るor保育士を増員する等の対策をしなければ需要に対応できないということを意味している。つまり後者の場合に求められるのは、市としての対応なわけで、決して、断じて「保護者同士の譲り合いの精神」とかではない。

それから。「子どもは保護者と一緒にいたいはず」とか「子どもは柔軟だから、園が変わっても問題ない」など、大人の論理を通すために、まだ表現する術が未熟な子どもの気持ちを代弁しているかのような発言を持ち込むのも論外。全ての子どもが一律同じ気持ちを持つわけではないし、子どもの気持ちは、その子ども以外の誰のものでもない。行政(の上に立つ人)が行うべきは、一つの考え方や子育て方法を支持することではなく、多様な考えの人々がいることを前提に、最大多数の最大幸福を追求し、よりよい環境を提供する案を考えることだと思う。

昨年度の統計の速報値でも、86%以上の働く女性が育休を取得しているこのご時世に(結果の概要|厚生労働省; 本題と関係ないけど平成25年度の確報がリンク切れ)働く環境を守りたい保護者が非難されている現状を、所沢市がどう受け止めているのか興味深く見守っています。