働く母のすすめ

You are stronger than you think.

我が家にサンタがやってきた

以前にも一度、ブログに書いたことがあるけれど、私は学生時代、教授の娘さんの家庭教師をしていたことがある。教授のお宅は人も物も整然としていて、パンイチでごろ寝した父親が、真っ昼間からビールを飲んで野球観戦している家庭で育った私にとっては、ものすごくカルチャーショックだった。それゆえこの経験は、10数年経った今でも、私の頭の中でブログの中で何度も思い描くことになるほど、印象的なものとなっている。

教授は文系学科の教授だったので、ゴリゴリ理系な高校三年生の娘さんの受験勉強を見られないんだと笑っていた。けれど多分、私に求められていたのは、勉強を教えることというよりも、大学受験を前にナーバスになっている一人っ子の娘さんの話し相手となる”お姉さん”としての役割だったように思う。事実、娘さんはとても賢くて、私が家庭教師を始めた時には既に、第一志望の大学に十分合格できるだけの実力があったように思う。
諸々の事情から、週に一度、午後からの4-5時間という長時間に渡り家庭教師をしていたので、休憩時間には奥さんのお気に入りの紅茶を、夜には奥さんの手作りの温かいご飯をいただきながら、たわいもない話をたくさんした。泊りがけで勉強を教えた日もあった。「一人暮らしは色々大変でしょ?」と帰りにおかずを持たせてくれたりもして、娘さんにとってよいお姉さんになれたかはわからないのだけれど、3年以上付きあった彼氏と別れ、春からは住み慣れた街から離れる予定だった私には、染み入るような暖かい場所だった。

娘さんのセンター試験も近づいてきた12月の終わり。教授からクリスマスプレゼントに一枚のCDをいただいた。「うちではクリスマスには、高価なものでなくてよいから、相手のことをちゃんと考えたプレゼントを送りあうことにしているんだ。」と教授は言った。素敵な習慣だと思った。
CDは当時デビューしたばかりの日本の若いシンガーソングライターの曲だった。当時20代前半の私でさえあまり聞いたことはなかった彼の曲を、50歳を過ぎた教授が知っていることに正直驚いた。家に帰って聞いてみると、それは振り向かずに前を向いて歩き出そうという気持ちを歌ったものだった。私はそれを、自分が旅立つための応援歌にした。

ものすごく余談だけれど。そうして旅立った先で出会った夫は、偶然にもそのシンガーソングライターの大ファンで、初めて見に行った夫のバンドのライブでは、彼の曲のコピーをしていた。結婚してからは何度かそのシンガーソングライターのライブに行ったりもして、彼は色んな意味で、私の思い出に残るアーティストになった。

話は戻って。私の実家ではクリスマスはもちろん、誕生日ですらも、きちんとお祝いすることは少なかったように思う。父に至っては、私の誕生日を何度訂正してもずっと1日間違えて覚え続けている。だからといってその事を猛烈に不幸だと感じることもないけれど、私も同じようにお祝い事やプレゼントをおざなりやなおざりにしてしまっていた。プレゼントを贈る時にはあれやこれや悩んで決められないし、プレゼントを受け取るのもうまくない。
けれど親になってからは、息子の喜ぶ顔が見たい一心で、何を贈ろうかと考えている時間にとてつもない幸福感を感じるようになった。彼は笑うだろうか?飛び跳ねるだろうか?思ってたのと違うと不貞腐れるだろうか?このプレゼントは彼の人生をどう彩るのだろうか?そんなことを考えている私自身はプレゼントを受け取るわけではないのに、心がうきうきとして笑みがもれたりもする。

数日前。久しぶりに読みたい本に出会ったので自分用に本を買った。宅配ボックスに届いた本を見て息子が「息子ちゃんも、色んな絵がたくさん描いてある絵本がたっくさーんほしいなあ。」と言ったので、たくさんの絵本を贈ることにした。

この時期に誰かを思う温かい気持ちのことを、サンタクロースと呼ぼうと思った。