働く母のすすめ

You are stronger than you think.

謎解きは寝かしつけのあとで

0歳から保育園に通っている息子は、人生の大半を保育園で過ごしている。

それゆえこの3年半強の間。母ちゃん探偵は、息子の保育園での様子を探るべく、情報収集に余念がない。保育士さんとの育児交換ノートはもちろんのこと、保育園の掲示物、息子のクラスメートのママさんたちの話、そして最近ではまだまだ断片的ではあるものの本人の口から発せられる言葉の数々を参考に、息子の様子を推察している。

今週はじめのこと。息子の保育園カバンに筒状の物体が入っていた。それはノートの1ページを切り取って筒状にしたもので、ちょうどトイレットペーパーの芯のような形をしていた。保育園の製作にしてはシンプルすぎる外観。けれど時々、短い隙間時間に描いたと思われる芸術がバクハツした絵や抽象的な趣のある造形物がカバンに無造作に詰め込まれていたりもするので、いつものように息子が作った得体のしれない何かだと思い、あまり気にとめずにリビングの棚の上に置いた。


そして昨日。事件は起こった。保育園から帰宅すると息子が保育園カバンから小さな便箋を出してきて言った。「りょうちゃん(仮名)がおうちに帰ってから開けてみてね。って言ってたんだけど、これどうやって開けるの?」りょうちゃんは、息子のクラスメートの女の子。そういや以前、息子のクラスでは女の子同士でおてがみのやりとりをしているという話を聞いた。その余波が男子である息子にもやって来たのかと思い、息子が差し出した便箋を手に取った。けれどそれはどう見ても、まっさらの一枚の便箋。なので「開ける」ことは出来ない。何のメッセージも書かれていないし、保育園で見ても、おうちに帰ってから見ても全く差はないように思われる。りょうちゃんの言葉の真意はなんなのだろう?律儀な息子は、りょうちゃんの言葉の通り、なんとかその一枚の便箋を「開けよう」として試行錯誤したらしく、至るところにくしゃりと爪でつまんだ跡があった。私も何度も裏にしたり表にしたりして、注意深く便箋を観察した。もしかしてあぶり出しかもしれないと思い光に透かしてみたけれど、それは何度見てもどう見てもやっぱり何も書かれていない一枚の便箋だったし「開ける」ことも出来なかった。

息子を寝かしつけた後。便箋の謎を解くべく、母ちゃん探偵は机の上に置かれたその便箋をじっと見つめていた。そして、ズボラで管理の悪い母ちゃん探偵は、何日か前からずっと保育園カバンにその便箋が入っていることに気がついていたけれど、めんどくさくて取り出さずに入れっぱなしにしていたことを思い出した。息子が便箋を「開けて」と言ったはさっきのことだけど、この便箋をもらったのは何日か前ということになる。そうだ。確かこの便箋は、例のノートで作られた筒状の物体と同じ日に保育園カバンに入れられていたのではなかっただろうか。

「そうか!りょうちゃんが「開けて」ほしかったのは、便箋じゃなくて筒状のノートの方だったんだ!謎は全て解けた!じっちゃんの名にかけて!

リビングの棚の上に置かれた筒状のノートは、よく見るとその両端が丁寧にテープでとめられていて、表面にはえんぴつで文字のようなものが書かれていた。もしやこれは封筒か?逸る気持ちを抑え、母ちゃん探偵がテープを剥がして見てみるとその筒の中には、筒と同じノートで作られた便箋が1枚、きちんと折り畳まれて入っていた。

そのお手紙の内容は、ほとんどが解読不可能だったのだけれど。
気合いを入れて書いたと思われる最初の数文字は、我が家の苗字のように思われ。
便箋の大半を埋めていたかわいらしい女の子の絵の周りには、いくつかハートが散りばめられていた。

...ラ、ラ、ラ、ラブレターやないかーいっ!!

深夜に帰宅した父ちゃん探偵に報告を済ませると、任務を終えた母ちゃん探偵は、複雑な思いを胸に息子の眠る布団へと向かったのであった。