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働く母のすすめ

You are stronger than you think.

いのちに対する価値観と確率の話

先日。ママ友たちと話をしていたら、新型出生前診断の話になった。
ママ友の中には、既に色々と情報収集をしている人もいて、聞いていてちょっと驚いた。

新型出生前診断は、確定診断はできないけれど、母親の血液という簡便で侵襲性の低い方法で採取できるサンプルを使えるというメリットがある。従来行われていた羊水or絨毛染色体検査ならば、確定診断が出来るのだけれど、腹部への穿刺により流産するリスクなどがあったので、新しい技術により、金銭的な面を除けば、出生前診断の敷居はかなり低くなったのだと思う。

少し前の新聞記事になるけれど、実際、導入から1年の間で予想以上に新型出生前診断を受けた人がいて、そのうち羊水検査等にて陽性の確定診断を受けた人の97%が中絶を選んだという記事は、個人的にはかなりインパクトが強いニュースだった。

新出生前診断 染色体異常、確定者の97%が中絶 :日本経済新聞


新型出生前診断に関しての詳細は、医師や遺伝カウンセラーなどの専門家が自主的に作っているコンソーシアム のページがわかりやすくまとめられているので、そちらを読んでいただくのがよいかと思う。
NIPTコンソーシアム:母体血胎児染色体検査の遺伝カウンセリング

上記のサイトには、色々わかりやすい説明があるのだけれど、その中のひとつがこのグラフ。

先天性疾患の原因内訳NIPTコンソーシアムより抜粋

新型出生前診断では、ダウン症を含む3種類のトリソミーのみを検査対象としている。トリソミーによって染色体が通常より一本増えていることを定量的に評価するという方法のため、それ以外の異常は検出できない。また従来の確定診断は実際に染色体を染色して観察するので、もう少し色んな種類の”染色体疾患”を確定診断できるのだけれど、出生前診断をしてわかるのは、先天性疾患のうち25 %以下の限られた染色体疾患のみということをグラフは示している。何らかの先天性疾患を持って生まれてくる出生児は、出生児全体の3〜5%とのことなので、そのうちの25%以下、すなわち1%前後が先天性の遺伝子疾患で、さらに出生前診断で確定可能な先天性疾患を持っている可能性は、それ以下ということになる。もちろん、親の年齢に依存するので、そう単純な話ではないけれど。

世の中には本当にたくさんの疾患がある。名前を聞いたことがある疾患は、その中でも罹患率の高いほんの一部の疾患だと思う。先天性疾患だけでなく、癌など後天的に発症する疾患もある。今すぐ命に別条はなくても、服薬や注射、透析など頻繁なケアが必要な人もいる。病気ではなくても交通事故で突然命を落とす人は、毎年数千人いるし、自然災害や事件に巻き込まれて亡くなる人もいる。自殺者が毎年3万人いるという統計があるように、学校や会社で辛い思いをし続けている人もたくさんいる。

例えば、出生前診断によって、その1%の確率で起こる疾患を排除したとしても、親としてひとつの命を育むこと、そして人生を生きることは容易いことではないという覚悟は変わりなく必要だと私は思う。

話は少し変わって。新型出生前診断が可能になったのは、近年遺伝子解析技術がぐぐっと進歩したからなわけなのだけど。こうした解析技術により、 誰でも体を構成するタンパク質の設計図である遺伝子に、250-300個程度の機能喪失を伴う”ミス”  や遺伝性疾患に関連があると言われている"ミス”を50-100個程度持っていることが示されている。その"ミス"が機能的に重要な位置に起これば重篤な疾患を発症するし、複数の"ミス"の組み合わせがある疾患にかかりやすい体質を形成しているというケースもあるのではないかと考えられるわけで。つまり例えば、今、私が比較的健康でいられるのは、たまたまそうした位置にミスがなかった結果であり、そうした"ミス”はまた、私たち自身を特徴づけて”個性”を生み出している要因のひとつと言うことができると思う。

いのちは今のところまだ、それほど簡単で、controllableなものではない。


最後に。私が高校生の頃、祖父の法事に来ていただいたお寺さんが読経の後の説教でされたお話を。

【私たちは、誰かが病気になったり事故など遭った時に「たまたま運が悪かった」というような表現を使うことがあるけれど、実は、この一瞬一瞬を無事に過ごせていることの方が偶然であり、毎日はその偶然の連続という奇跡から成っている。】

当時、死なないから生きていた私にとって、この話はとても強烈なインパクトがありました。それ以来、この奇跡的な確率で起こっている日常に感謝して、生きていこうと思っています。