働く母のすすめ

You are stronger than you think.

うちにかえろう。

トーキョーで働いていたことがあります。

トーキョーの会社に就職した彼を追いかけて、トーキョーで職を探した。上京を機にトーキョーで彼と一緒に暮らしはじめた。そしてトーキョーで入籍をした。彼は夫になった。トーキョーで私たちは新しい一歩を踏み出した。

トーキョーでの生活は楽しかった。テレビで見ていたトーキョーがすぐそこにあった。雑誌で見るオシャレスポットにも望めばすぐに行けた。代官山でランチした。下北沢で芝居を見た。神田で本屋に行った。

満員電車の通勤にも慣れた。人混みの歩き方もうまくなったし、周りに無関心でいることも、周りから無関心でいられることも日常になった。時々「ねーちゃん、卵は奥から取りや。前の方のん、賞味期限切れてるで。」と聞いてもないのにスーパーで話しかけてくるオバチャンたちが懐かしくなったりもしたのだけれど。

「トーキョーは疲れるわ。」

上京して何年か経った頃、夫がポツリと言った。トーキョーにはたくさんののぞみがあると思っていた。キラキラした街並み。最先端の仕事。その先の未来。

霧はいつしか密度を増し、雲となって立ちはだかった。進むべきと信じていた道を見失い、私たちは大きく舵を切ることにした。


新幹線はトーキョーを出た。

ライトアップされているトーキョータワーを見るために、いつもDの席を予約する。1人の時は防犯のため窓際の座席に座らないこともトーキョーで身に付けた。

夫と2人で暮らした街が、窓の外を流れ、私はのぞみとともに、夫と息子の待つ街へと急ぐ。

新しい街は、いつしか帰る街になっている。